インモールド成形

インモールド成形とは、射出成形の金型内にあらかじめデザインフィルムを挟み込み、成形と同時に絵柄や機能を転写・一体化させる技術です。本記事ではその方法やメリットについて解説します。

インモールド成形の方法

インモールド成形方法の仕組みについての説明画像

ここでは、インモールド成形の流れについてご紹介します。製品を成形すると同時に「加飾」も行える技術であり、以下の1〜4の工程を連続的に繰り返すことで、効率的な生産とコスト削減が期待できます。

  1. フィルムを金型内へ供給する
    はじめに、あらかじめ意匠が施されているフィルムを金型内に供給します。フィルム送り装置を使用することによって、正確かつ高速にフィルムをセットすることが可能です。
  2. フィルムを固定する
    供給されたフィルムを金型内の指定位置で固定し、吸引装置を使用してバキューム(真空)状態で吸着させます。これにより、金型キャビティの形状に合わせてフィルムを隙間なく密着させることができ、成形品との一体感を高めます。
  3. 射出成形を行う
    金型を閉じ、溶融したプラスチック樹脂を流し込みます。この熱と圧力によって、フィルムと樹脂が一体化し、製品の形状が作られます。同時に、フィルムの意匠が製品表面に反映されます。
    ※この際、フィルムごと製品に残す「IML(インモールドラベリング)」と、フィルム基材は剥離してインク層のみを転写する「IMR(インモールド転写)」という手法に分かれます。
  4. 製品を取り出す
    冷却・固化が完了したら金型を開き、製品を取り出します。取り出し時には既に加飾が完了しており、そのまま次の工程へ移行できる状態になっています。

インモールド成形が使われている業界

インモールド成形は、自動車部品をはじめ、家電、アミューズメント機器など多岐にわたる分野で採用されています。

具体的には、自動車の内装パネルやカーステレオ部品、デジタルカメラの筐体、パチンコ台の装飾パーツなどが挙げられます。また、外食産業においては、回転寿司店で使用される柄付きの皿などにも、耐久性の高いこの技術が活用されています。

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インモールド成形のメリット

成形後に別途塗装や印刷を行う従来の方法に比べ、インモールド成形には以下のようなメリットがあります。

  • 成形と加飾の同時実現:製品の成形と表面加飾を一工程で行えるため、生産効率が大幅に向上します。
  • 工程削減によるコストダウン:従来必要だった塗装や印刷などの二次加工が不要となり、製造コストを抑制できます。
  • 高い意匠性:複雑な形状や多色デザインにも対応可能で、製品の外観品質を向上させることができます。
  • リードタイムの短縮:成形と加飾を同時に行うため、製品完成までの時間を大幅に短縮できます。
  • 環境負荷の低減:塗装工程を省略できるため、有機溶剤の使用量を抑え、VOC(揮発性有機化合物)の排出を削減できます。
  • 両面加飾の可能性:専用の金型や特殊な設備を用いることで、製品の表面と裏面の両側に同時に転写を行う技術も存在します。
  • 機能性の付与:成形と同時にハードコートなどの機能性を付与することができます。
  • 高精度な加飾:金型内で加飾を行うため、高い精度で意匠を転写できます。
  • 量産性の向上:自動化された工程により、高品質な製品の大量生産が可能です。
  • デザイン自由度の拡大:フィルムの特性を活かし、従来の成形方法では難しかった表現が可能になります。
  • 耐久性の向上:転写時にハードコートなどの保護層を最表面に形成できるため、製品の耐摩耗性や耐候性が向上します。
  • 部品一体化による軽量化:別パーツでの加飾や金属部品を代替し、樹脂パーツとして一体化できるため、製品全体の軽量化に貢献します。
  • 多品種少量生産への対応:フィルムの交換だけで異なるデザインの製品を生産できるため、柔軟な生産体制を構築できます。

インモールド成形のデメリット

多くのメリットを持つインモールド成形ですが、採用する際にはいくつかのデメリットも考慮する必要があります。

  • 初期投資コストの増加:専用の金型や自動化設備が必要となるため、小規模な生産や試作段階では費用対効果の面で課題が生じる可能性があります。
  • 立体形状への対応制限:比較的平坦な形状の製品に適している一方で、フィルムが金型内で十分に追従できない場合があるため、深絞りや複雑な立体形状への対応には制限があります。
  • 材料の適合性と接着性の課題:フィルムと樹脂の適合性や接着性には注意が必要です。使用する材料の組み合わせによっては、製品の品質や耐久性に影響を与える可能性があります。

インサート成形との違い

インモールド成形とインサート成形は「金型内で何かを一体化させる」点は同じですが、目的が異なります。

インモールド成形は、主に「加飾や機能性付与」を目的としています。金型内に加飾フィルムを配置し、外観品質の向上やハードコート性を持たせるために行われます。

これに対し、インサート成形は、主に「構造強化や複合化」を目的としています。金属部品(ナットや端子など)や異素材を金型内に配置し、樹脂で包み込むことで製品としての強度や機能を成立させます。

つまり、インモールド成形は「見た目や表面機能を高める加飾型」、インサート成形は「構造的強度や通電性を付与する補強・機能型」という違いがあります。

フィルムインサート成形との違い

インモールド成形と比較されやすい加工が、フィルムインサート成形です。工程のイメージは似ていますが、フィルムの扱い方や加飾範囲に明確な違いがあります。

3D形状・深絞り形状への対応差

平面や緩やかな曲面はインモールド成形が得意とする領域です。深い凹凸や絞り形状はフィルムインサート成形が優位となります。ただし後述のFSR工法の登場により、インモールド側も深絞り領域への対応範囲が広がっています。

インモールド成形の限界と採用時の注意点

メリットの大きい工法ですが、量産現場では形状・材料選定の制約に配慮が必要です。採用前に以下のポイントを確認してください。

  • 凹凸が強い形状ではフィルムが追従せず、しわや白化が発生しやすい
  • 平坦または緩やかな曲面が中心の工法のため、深絞り部品には適しません
  • 専用金型と転写箔の初期コストが発生します
  • フィルムと成形樹脂の融点・密着性の相性が品質を左右します
  • ウエルドラインの出方に配慮した金型設計が求められます

IMRとFSR工法

インモールド成形は発展系工法が登場しており、採用可能な製品範囲が広がっています。IMR(In Mold Release:インモールド転写)は、射出成形と同時にフィルム基材から意匠のみを樹脂表面へ転写する3次元加飾技術です。Wet工法からDry工法への転換を支える中核技術として位置づけられています。

FSR工法は、従来不可能とされた深絞り形状や難易度の高い加飾に対応する手法です。高精度な位置合わせが可能で、3D形状の製品にも多彩な加飾表現を実現できます。

既存射出成形機への後付け導入

IMRの強みは、新規ラインを構築せずに既存の射出成形機へ箔送り装置を後付けする形で導入できる点にあります。少ない設備投資で加飾工程を内製化できるため、検討段階の設計・調達担当者にとって導入ハードルは低くなります。

インモールド成形に向く素材

インモールド成形は、多くの熱可塑性樹脂で使用可能です。

例えば、透明度が高く耐熱性のあるPC(ポリカーボネート)や、光沢があり加工性の高いABS樹脂などは、美しいデザインを実現しやすく適しています。

ただし、重要なのは「使用するフィルムと成形樹脂の相性」です。樹脂の融点や接着性を考慮して、最適なフィルム素材を選定する必要があります。

インモールド成形の種類

インモールド成形の技術は日々進化しており、製品の裏と表を同時に印刷する「ダブルインモールド」や、ガラスなどの異素材と樹脂を一体化させたボディに印刷を施す「ガラスインサートインモールド」など、様々な手法が開発されています。

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