射出成形

射出成形は、プラスチック製品の大量生産に広く用いられる成形方法です。本記事では、射出成形の方法やメリット・デメリット、適した素材について詳しく解説します。

射出成形の方法

射出成形は、プラスチックを溶融し、金型に流し込んで成形する方法です。

樹脂を溶かす

射出成形では、まずプラスチック樹脂を加熱して溶融します。樹脂を加熱するために、射出成形機にはヒーターが設置されています。このヒーターで樹脂を一定の温度まで加熱し、粘度の低い液体状にします。溶融した樹脂は、成形のために必要な流動性を持ち、次の工程に進むことができます。

金型に流し込む

溶融した樹脂は、射出成形機のスクリューによって金型に押し出されます。金型は製品の形状を決定するための重要な部品で、樹脂が均一に行き渡るように設計されています。樹脂は金型内を流れ込み、製品の形状を形成します。

圧力をかける

樹脂が金型に流れ込んだ後、「保圧」と呼ばれる過程で圧力をかけて成形します。これにより、樹脂が金型の隅々まで行き渡り、しっかりとした製品が形成されます。圧力は一定時間維持され、樹脂が冷却・固化するのを待ちます。この過程で、製品の寸法精度や強度が確保されます。

射出成形が使われている業界

  • 自動車産業
  • 家電製品
  • 医療機器
  • 日用品
  • 玩具

製造される部品と製造事例

2色成形(医療器具)

イワハシの射出成形事例_プロペラファン
引用元:イワハシ公式HP
https://www.iwahashi.jp/product/

2色成形(医療器具)

ウッドベルの射出成形事例_医療器具
引用元:ウッドベル公式HP
https://wood-bell.co.jp/profile/achievement/medical/medical-example/medical-example-01/

射出成形の役割

射出成形は、溶融したプラスチックを高圧で金型に射出し、冷却・固化して製品形状を得るプロセスです。例えば自動車分野では、バンパーや内装トリム、ヘッドライト部品など、複雑形状かつ寸法精度の高い部品を高速・大量に製造するために欠かせません。

大量生産に向いた高い生産性

金型を一度製作すれば、短いサイクルタイムで同形状の部品を繰り返し成形できます。これにより、一個あたりのコストを大幅に低減できるうえ、安定した品質を確保しやすくなります。

軽量化と部品統合による車両性能向上

プラスチックは金属に比べて軽量です。射出成形では薄肉化やリブ一体成形が容易なため、車体の軽量化と部品点数削減に貢献します。軽量化は燃費向上や電動車の航続距離延長に直結する重要課題です。

設計自由度と複雑形状への対応

スナップフィットやインサート一体化など、複雑形状を一度の成形で実現できます。これにより組立工程を簡略化し、製造コストや不良リスクを抑えられます。

自動化・デジタル化による品質安定

近年は成形条件をリアルタイムで監視するIoT設備や、金型内圧・温度センサーによるプロセス制御が普及しています。これらの技術が品質のばらつきを最小化し、歩留まり向上を支えています。

射出成形のメリット

射出成形には、いくつかの重要なメリットがあります。

量産しやすい

射出成形は、同じ製品を大量に生産するのに適しています。一度金型を作れば、繰り返し同じ形状の製品を短時間で製造することができます。このため、コスト効率が高く、大量生産に向いています。

後工程をあまり必要としない

射出成形で作られた製品は、すでに完成形に近いため、後工程が少なくて済みます。成形後に追加加工がほとんど不要であり、製品がすぐに出荷できる状態になります。これにより、製造プロセスが簡略化され、生産効率が向上します。

射出成形のデメリット

射出成形にはいくつかのデメリットもあります。

少量生産には不向き

射出成形は、大量生産に向いている一方で、少量生産には不向きです。金型の製作には高いコストがかかるため、少量の製品を作る場合にはコスト効率が悪くなります。

金型製作に時間がかかる

射出成形では、製品の形状に合わせた金型を製作する必要があります。この金型の製作には時間がかかり、製品の立ち上げに時間がかかることがあります。また、金型の設計や加工には専門的な技術が求められます。

形状に制限がある

射出成形では、製品の形状に制限があります。特に、アンダーカットや深い凹部などの複雑な形状を持つ製品を作るのは難しいことがあります。金型の設計や樹脂の流れの管理が難しく、製品の形状に制約が生じることがあります。さらに、大型の製品を作る際には、金型の大きさや成形機の能力に制限があるため、設計に工夫が必要です。

射出成形ではヒケ(成形不良)に注意

ヒケとは

ヒケとは、射出成形品の表面に発生するへこみ(くぼみ)のことです。これは、成形したプラスチックが冷却・固化する際に、体積が収縮するために起こります。特に肉厚が厚い部分では、表面が先に固まり、内部の収縮分を補いきれず、表面が内側に引き込まれてヒケが発生します。

外観を損なうだけでなく、製品の強度低下にもつながるため、射出成形における重要な品質課題の一つです。

ヒケの発生場所

成形品の肉厚部

ヒケは、成形品の肉厚が厚い部分に特に発生しやすいです。これは、肉厚部が薄い部分に比べて冷却に時間がかかるためです。

成形品の表面が先に固化する一方、内部の溶融樹脂は冷却・収縮を続けます。この収縮による体積減少を補うことができず、固まった表面が内側に引き込まれてへこみが生じます。

この現象は、製品の厚みが均一でない場合に顕著に現れ、外観不良や強度低下の原因となります。

リブやボスの裏側

成形品にリブやボスなどの補強構造がある場合、その取り付け部分の裏側(反対面)にヒケが発生することが多いです。これは、リブやボスによってベース部分の肉厚が部分的に厚くなるためです。冷却収縮の際、リブやボスと接合している部分の収縮が大きくなり、その影響が表面に現れます。

ヒケを避けるためには、リブやボスの肉厚をベース部分の60%以下に設計したり、根元にR(丸み)をつけたりするなどの工夫が必要です。

成形品全体

ヒケは、特定の場所だけでなく、成形品全体にわたって発生することもあります。これは、保圧圧力・保圧時間不足、ゲート小径/早期凍結、クッション不足などが主な原因です。

これらの成形条件が不適切だと、溶融樹脂が金型内に十分に充填されず、収縮による体積減少を補うことができません。

その結果、成形品全体で軽度のヒケが発生したり、成形品が金型から離型する際に変形する反りを伴ったりすることもあります。

ヒケ発生の対策

保圧力の設定

保圧は、射出後、金型内で収縮する樹脂の体積減少を補うために、追加で圧力をかける工程です。

ヒケ対策では、この保圧を適切に設定することが重要です。保圧を高くすることで、樹脂が金型内にしっかりと充填され、収縮によるへこみを防ぐことができます。しかし、高すぎると反りやバリの原因となるため、製品の形状や材料に応じて適切な値を設定する必要があります。

保圧時間の設定

保圧時間は、ヒケ対策において保圧とセットで考慮すべき重要な要素です。

保圧時間が短いと、樹脂が固化する前に保圧が解除され、収縮を十分に補いきれずにヒケが発生します。一方、長すぎると成形サイクルが延びて生産性が低下します。製品のゲートシール(ゲート凍結)が確認できるまで保圧を維持することが理想的です。

クッション量

クッション量は、保圧をかけるためにシリンダー内に残しておく溶融樹脂の量です。保圧をかけることでこのクッション量は徐々に減少します。

ヒケを確実に防ぐためには、保圧終了時にも適切なクッション量が残るように設定することが重要です。この量が少なすぎると、保圧を十分にかけられず、ヒケが発生する原因となります。

金型の温度設定

金型温度は、樹脂の冷却速度をコントロールし、ヒケの発生を抑制します。金型温度を高く設定すると、樹脂がゆっくりと冷却・固化するため、内部まで均一に収縮が進み、ヒケが目立ちにくくなります。しかし、金型温度が高すぎると、成形サイクルが長くなり、生産効率が低下します。

加熱筒温度の設定

加熱筒温度は、樹脂の流動性を左右する重要な要素です。この温度を適切に設定することで、樹脂が金型内にスムーズに充填されるようになり、ヒケの発生を防ぐことができます。一般的に、加熱筒温度を高くすると樹脂の流動性が向上しますが、収縮率も大きくなるため、適切なバランスを見つけることが重要です。

ランナーやゲートのサイズの調整

ランナーやゲートは、金型内へ樹脂を導く流路です。これらのサイズや形状は、金型への樹脂の充填性や保圧の伝達効率に大きく影響します。

ヒケ対策として、ランナーやゲートを適切なサイズに太くすることで、保圧が金型全体に行き渡りやすくなります。また、ゲート位置を肉厚部に配置することで、ヒケの発生を抑制できます。ゲートが小さすぎると保圧が伝わりにくく、ヒケの原因となります。

冷却水路の追加

冷却水路は、金型内の温度を調整し、樹脂の冷却を促進する役割を果たします。ヒケは冷却収縮の不均一によって発生するため、特に肉厚部やヒケの発生しやすい部分に冷却水路を追加することで、その部分の冷却を強化し、全体を均一に冷やすことができます。

これにより、部分的な急激な収縮を防ぎ、ヒケの発生を抑制します。均一な冷却は、ヒケだけでなくそりの対策にも有効です。

シボ加工

シボ加工とは、金型表面に微細な凹凸(テクスチャー)を施す表面処理のことです。ヒケの根本的な原因を解決するものではありませんが、ヒケが目立たなくなるという視覚的な効果があります。特に外観が重視される製品において、ヒケが避けられない場合や、わずかなヒケを隠したい場合に有効な対策となります。

また、製品に滑り止めなどの機能性を付与する効果もあります。ただし、深すぎるシボは離型性を悪化させる可能性があるため注意が必要です。

自動車部品で使われる主なプラスチックの種類

自動車用途では、耐熱性・耐薬品性・衝撃強度など厳しい条件を満たすために、汎用樹脂からエンジニアリングプラスチックまで幅広い材料が採用されています。

ポリプロピレン(PP)

軽量・耐衝撃性・コストメリットに優れ、バンパーや内装トリム、インストルメントパネル基材などに最も多く使用されます。

ABS樹脂

高い表面光沢と塗装・メッキ適性を持ち、センターコンソールやホイールカバー、ラジエーターグリルなど意匠部品に採用されています。

ポリカーボネート(PC)/PC/ABSブレンド

ガラス並みの透明性と耐衝撃性を活かし、ヘッドライトレンズや計器クラスターカバーに使用されます。PC/ABSは剛性と加工性のバランスが良く、内装構造部品に用いられます。

ガラス繊維強化ナイロン(PA6/PA66+GF)

高強度・耐熱・耐油性を備え、吸気マニホールドやラジエータータンク、サーモスタットハウジングなどエンジン周辺部品に不可欠です。

ポリブチレンテレフタレート(PBT)

寸法安定性と電気絶縁性に優れ、ハーネスコネクタやセンサーケース、ECU筐体など電装部品の定番材料です。

アクリル(PMMA)

高い透明度と耐候性を持ち、テールランプレンズや内装照明カバーに使用されます。

高機能樹脂(PPS・PPA・PEEK・LCPなど)

220℃超の耐熱性や低吸水、高強度を活かし、ハイブリッド車のインバータ部品や駆動系ギア、微細電装コネクタなど過酷環境下で活躍します。

熱硬化性樹脂(フェノール・エポキシなど)

再加熱で軟化しない特性を持ち、ブレーキピストンやパワー半導体封止材など、高温・高圧環境で形状安定性が必要な部品で利用されています。

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